スーパーロボット対戦オリジナル・ジェネレーション
焔鋼なショート・ストーリー
「ラッセル・バーグマンの受難」
『DC戦争』『L5戦役』、そして「インスペクター事件」などの数々の地球圏での戦争も終結し、今は平和となっていた。
一応の沈静となっている今日、進められているのは復興と、また来るかもしれない『敵』に備えての防衛を作る事であった。
現在、ムーンクレイドルで防衛活動をしているヒリュウ改の艦長レフィーナの目に入ったモノはソレであった。
レフィーナ「・・・・・これは・・・・どうしましょう?」
ショーン「・・・これは新型のテストパイロットに我々の方から出向願うという命令書でございますね」
レフィーナ「ええ、そうなのですが、パイロットの方が名指しで来ていまして・・」
ショーン「・・・ほう、これは・・・・面白いですね」
―ヒリュウ改格納ドッグ内―
『・・ラッセル・バーグマン少尉、レフィーナ・エンフィールド中佐が呼んでいます。至急ブリーフィングルームに出頭願います』
カチーナ「ラッセル、お前呼ばれているぞ?」
ラッセル「・・・ですね・・・けど」
カチーナ「お前だけ呼ばれるなんて珍しいな。なんかやらかしたのか?」
ラッセル(・・・大概、命令伝達で中尉とセットで呼ばれるか、命令違反で中尉のみが呼ばれるかだから、僕だけなんて、珍しいというか初めてな様な・・・)
カチーナ「・・・・なんだその感慨深そうなツラは! 思い辺りがねぇならさっさと行って来いッ!!」
ラッセル「はっはいぃ!」
―ブリーフィングルーム―
ラッセル「ラッセル・バーグマン少尉、出頭しました」
レフィーナ「ようこそラッセル少尉、今日は、貴方に現任務とは別の任務を与えます」
ラッセル「ムーン・クレイドル警戒任務とは別の任務?
自分だけって・・・・・・まさか、中尉の事ですか!?」
ショーン「ええ、そうです。現段階での艦長の心労は我々の想像を絶するモノでして、そこであえて涙を飲んで・・・・中尉を・・」
ラッセル「ええッ!? そんな!」
レフィーナ「違いますッ!!」
ショーン「ええ、もちろん違いますともラッセル少尉、・・では艦長、どうぞ」
ラッセル「・・・・・・・・・」
レフィーナ「・・・・・ゴホン、えー軍の方からテスト・パイロット要請が来まして、明日からその任務の為、ラッセル少尉はマオ・インダストリー社の方に出向してもらいます」
ラッセル「・・・・・・・・・・」
ショーン「ちなみに貴方一人だけの出向になりますので、まーご注意を・・・」
ラッセル「・・・・・・え? ちょ・・・ちょっと待って下さい。自分一人だけですか? それだったら中尉を向かわせた方が・・・」
レフィーナ「軍は適正で貴方を選んだと、報告書に書かれています。・・すみませんとはわかっていますが・・・・」
ショーン「と、言う訳で、今回の任務変更の件、カチーナ中尉への報告は部下である貴方からお願いします」
ラッセル「えええぇ!?」
レフィーナ「連絡事項はそれだけです。明日からの任務に備えて、本日はその準備に回ってください。では頑張ってください・・・本当にすみません」
足早々に場から去るレフィーナ、それに付き添いながら親指立てながらに去っていくショーン、ポツンと残ったのはラッセルだけであった。
本日カチーナ隊で、カチーナ以外で残っているのも、彼ラッセル・バーグマン少尉だけである。
後日―マオ・インダストリー社―
ロバート「・・・すまない、カチーナ中尉の事をすっかり忘れていたよ」
ラッセル「大丈夫ですよ。中尉には戦車のテスト・パイロットだという事を、なんとか伝えられましたので」
ロバート「つまり、伝えるまで折檻されていたという事か・・・・・・本当に大丈夫かい?」
ラッセル「あっ大丈夫ですよ。骨には異常ないので」
ロバート「・・・・・・・・・」
ラッセル「しかし、戦車のテスト・パイロットというのは珍しいですね」
ロバート「ああ、ムーン・クレイドルなどの拠点防衛に、新型の戦車を配備させようという計画が持ち上がってね。
先の大戦での敵勢力から得られた技術なんかも使ってね」
ラッセル「でも、なんで自分が・・・」
ロバート「それは、この設計図を見てみれば分かるさ」
ラッセル「! これって確か、イルム中尉が乗っているグルンガスト壱式の・・・」
ロブ「そう、壱式の変形パターンの一つ、バトルタンク・モードのガストランダーをおおもとに、量産目的に作ったバトルタンクなんだ。
残念ながら弐式ではオミットされた変形パターンでね。設計だけが持て余していたんだけど、今回の計画で再び持ち上げられたんだ」
ラッセル「それで、ロバート博士がテスラ・ライヒ研究所から出向してきたんですね」
ロバート「そういう事、で、君が呼ばれたのもそこら辺にあるんだよ。
前大戦、前々大戦での君の活動内容に目が引いてね」
ラッセル「・・・・自分は特別な事は何一つしていませんが・・・・」
ロバート「別にリュウセイやキョウスケ中尉を基本として考えてはいないよ。・・・・・ただ単に君の部隊が『超凄腕』らが集まっているだけなんだから」
ラッセル「・・・・・はぁ、どうも」
ロバート「おいおい、気落ちしないでくれよ。君の提出された活動内容は、本当に目を見張るものだったんだから。
君が乗った事がある機体は、報告ではゲシュペンストやグルンガスト壱式・弐式、ジガンスクードとドゥロ、シュッツバルト、それにラーズアングリフとランドグリーズ・・・。
これだけの数の機体を乗っている人間はそうはいない」
ラッセル「それは量産型のゲシュペンストmkUの装甲では耐え切れない火力に出会う事が多々あったので、もっと頑強な機体を多く乗りこなせた方が役に立つと思って、
自分はどうも機敏に動くよりも装甲を頼りにした戦闘をしてしまうので」
ロバート「だから、君にこのバトルタンクをテストしてもらいたかったんだ。グルンガストシリーズから数々の砲撃機まで乗った事のあるパイロットなんて、あの部隊だけだからね」
ラッセル「はぁ・・」
ロバート「では直にコイツを見てくれ!
これが準特機種バトルタンク、『ランドオックス』だッ!
エネルギー収束単砲『メガキャノン』、両肩部の電磁誘導砲二門『リニアカノン』に両腕部の『ガトリングガン』、そして『スプリットミサイル』も内蔵、変形機構が無い為、量産型でも壱式のガストランダーに匹敵する装甲を保持し、足回りもブーストを使っての高速移動も可で、それに耐え切る構造もしているので問題は無い!!」
ラッセル「準特機種? じゃあこれは弍式と同じで、操作系統はPT同様なんですか」
ロバート「その通り、しかも戦車形態のみだから、操作はかなり単純化されているから、PTの適正検査を落ちた者を今回のテスト・パイロットの選抜しているんだ。
だから、手ほどきの方をよろしくお願いするよラッセル少尉」
ラッセル「ええぇ! 自分がですか!?」
ゴロウ「ゴロウ・タナカヤマ軍曹です。よろしくお願いします」
ヒューバット「ヒューバット・ケリー兵長」
マイケル「マイケル・ウィルソン曹長! よろしくお願いします!」
ジョディ「ジョディ・クロフォード兵長です。女性ですがお構いなく指導の方をお願いします」
ラッセル「えーー・・ラッセル・バーグマンです。まぁ少尉ですが、新型機のテストですので、階級は気にせず、今回のテストに望んで行きましょう」
マイケル「少尉、質問はよろしいでしょうか!?」
ラッセル「はい?」
マイケル「少尉は、あの英雄と名高いハガネとヒリュウ改の両艦で構成された部隊『SRW隊』の隊員なのは本当ですか?」
ラッセル「ええ、まあ・・」
ジョディ「やっぱり! 最初は聞いた事のない名前とは思ったのですが、先程メカニックの方達から話を聞きました!」
ラッセル「あー自分は、余り戦果は上げていませんし、あの部隊関係なく並みの軍人ですので、そこら辺は気にせず・・・」
ゴロウ「自分は日本の剣術家が特機乗りで大活躍と聞きまして、PTパイロットになりました! 是非その方のお話を」
マイケル「おいおいゴロウ、剣術で特機乗りになるんだったら、カタナで弾丸を斬れるぐらいにならなきゃあいけないんだぜ」
ジョディ「そうよ、あとは頑強な身体ね。
例え、機体の脱出システムが働かなくても、シャトルが爆発しても生き残るぐらいのタフガイじゃなければね」
ラッセル(・・・ゼンガー少佐、アラド君にキョウスケ中尉の事か・・)
マイケル「おいおいジョディ、そいつは言い過ぎだ。せめてコロニー格闘チャンピオンに殴られても平気なぐらいにしときな」
ラッセル(・・・・・・ラミア・・さんだったかな?)
ジョディ「OK曹長! だったら、オリンピック選手にアームレスリングで勝てるぐらいのタフガイにしとくわ!」
ラッセル「それ、女性の方です」
ゴロウ「特機に乗られた事があると聞きました。どの様になれば特機乗りになれるか、どうぞご教授を・・」
ヒューバット「いい加減にしろ! 俺達はアイドルに会いにきたんじゃないんだぜ! 大体、名前も聞かないぐらいに戦果を出してない野郎に学ぶ事なんかないだろうッ!」
マイケル「おいヒューバット! 上官に向かって、その口答えはないだろう!」
ヒューバット「先に階級関係ないって言ったのはアッチだぜ! だから、言いたい事を言ったまでだ!」
ラッセル「はい、そっちの方が、気が楽ですので、みなさんも言いたい事があったら言ってください。自分もまだまだ未熟ですが、答えられる分には答えていきます」
ヒューバット「・・・チッ!」
マイケル「ヒューバァァァット!」
ジョディ「すみません少尉、普段でしたら、こんな事は有り得ないのですが、彼はPTの適性検査に落ちてから、どうも怒りやすくなって」
ラッセル「それだけやる気があるって事なんでしょう。
幸い、みなさんはPTの適性検査の際に、PTの操縦技術を学んでいますし、戦車の腕を見込まれて選抜されている様なので、ランドオックスの操縦法は、僕がいなくても覚えられるでしょう」
連邦司令官「・・・彼は大丈夫なのか? 余りに覇気が無いのだが」
ロバート「大丈夫ですよ。ああ見えても結構骨はあるんですよ」
連邦司令官「そうなのか? ・・・やはり、民間上がりは軟弱という事なのですか」
ロバート「いえ、彼は違いますよ」
連邦司令官「何ぃ! ではまさか、敵から寝返った者か!? その様なあやふやな者を君は選んで来たのか!」
ロバート「いやいや、確かにあの部隊は、民間からのとか、元敵勢力の兵士などはいますが、彼は最初からの連邦軍兵士ですよ」
連邦司令官「・・・なんと本当か。嘆かわしい・・・あの様な軟弱な者が我が軍の兵士とは」
ロバート「いえ、ですから大丈夫ですって、数々の大戦を経験してきた歴戦の兵士なんですよ」
ロバート(いっそ、カチーナ中尉を連れて来た方が良かったか? でも、その時はもっと問題が起こるか・・・・・)
ー月面基地、病院施設ー
タスク「あーーーーん・・・・って言って」
レオナ「なぜ、私がそんな事を言わなくてはいけないの? 大体食事だったら、自分で食べなさい!」
タスク「いやいや、せっかく入院したんだから、こういう時は手厚い看護が一番なんだから、ほらほらレオナちゃん、食事カムヒアァ!」
レオナ「手厚い看護はなんとなく分かるけど、せっかく入院というのは分かりませんわ。
貴方が無茶をした結果なのだから、自業自得でしょう?」
タスク「これはレオナちゃんを守る為に負った名誉の負傷なんだから、いわば俺からのラブコールよ」
レオナ「じゃあ、そのラブコールは入りませんから、さっさと全快してくださる? その為にも好き嫌い言わず魚も食べなさい」
タスク「・・・いや、当分魚は食べたくないというか、特にひらめは」
レオナ「トラウマ負う程のモノではないでしょう。さっさと食べなさい! 看護士の方が来るでしょう!」
タスク「ん〜〜おいち〜」
レオナ「・・・・・やっぱり、お粥以外も作って来るわね? それだったら魚も食べるでしょうし」
タスク「い・・いや! それはヤバイんじゃないかな!! お粥ぐらいならいいけど、ほかのとなると栄養のバランスとかで病院側からとやかく言われるだろ」
レオナ「・・そう、だったら好き嫌いなく食べなさい。入院時の栄養の摂取は大事なのだから」
タスク「何? やっぱり俺がいないと寂しい? いや〜色男は大変だぜ。よしッ任しときな! 明日退院って決めたから」
レオナ「バッ・・・バカ! 何を言っているの!? そういうのではありませんわ! ・・・私が言っているのは、リューネさんもいないから、戦力的な事を言っているのよ!」
タスク「え・・・そうか、この前の戦闘が生体兵器ッポい相手だったから、人工筋肉とかの特殊精密機器が多いヴァルシオーネは念の為にオーバーホールだっけ」
レオナ「そうよ、だから今はテスラ・ライヒ研に行っているのよ」
タスク「・・・・・・・・・じゃあ、ヒリュウ改に残っているパイロットって、中尉とラッセルさん?」
一抹にはほど遠い数の不安がタスクの脳内に走りまくった。
ー連邦軍演習施設ー
ゴロウ「むーやはり準とはいえ特機種、前に受けたPTの操作試験とは大違いだ」
マイケル「俺達は戦車の腕を買われてココにいるって事さ、PTの操作試験の件はコイツを操作できるってだけの話なんだろ」
ヒューバット「演習で量産型のゲシュペンスト相手だからといって、お前ら被弾率が高すぎだ。最も、本職であられる少尉殿がTOPの高さだったがね」
ジョディ「やめなさいヒューバット!」
ラッセル「えー・・っと、まあ確かに僕の被弾率は高かったですね。でも、ヒューバット兵長、君は避けすぎです」
ヒューバット「・・・はあ? それはどういう事だ!?」
ラッセル「回避運動に気を取られすぎて、攻撃タイミングを多く逃しています」
ジョディ「・・・・確かにそうね。少尉は被弾率が高いけれど、着弾数も一番高いわ」
ヒューバット「それがどうした! 当たったらお終いじゃないか!」
ラッセル「あと、君の機体の着弾箇所ですが、機体に致命的破損を起こしやすい場所が多いです」
ヒューバット「俺が逃げ腰だからだってのかよ!」
ラッセル「これはPTではありません。準特機種の戦車です! 設計図にきちんと目を通し、機体の装甲の箇所それぞれの強弱の差、破損してはいけない箇所を覚えておいて下さい。
先程、メカニックの方達と話していたと言っていましたが、それも重要です。彼らが一番機体の構造と現状が知っているのですから、だから、言わせていただきます。
君のワガママで機体は動いてはくれません!」
ヒューバット「てめぇぇ!!」
連邦司令官「ラッセル少尉・・・・なにか揉め事でもあったのかね?
怪我をしている様だが・・」
ロバート(あれ? 顔面のアザが一つ多い様な・・)
ラッセル「いえ、これは昨日自分の隊長につけられたモノです」
連邦司令官「ああ、そうか、君の所の隊長にか、彼女の勇名は聞いている。なるほどなるほど」
ヒューバット(・・・・・かばって、点数稼ぎかい少尉殿)
ラッセル(・・・いえ、君に殴られる前からこの様ですから、君のだけ限定して言うのって難しいでしょう?)
ジョディ(それもそうですね)
連邦司令官「・・・・・? ラッセル少尉、君の演習結果は見せてもらったよ、さすがはあの部隊で叩き上げられただけはある。
慣れているとはいえ、テスト機であれだけ出来るとは」
ロバート「敵からの攻撃は全て装甲で受け止め、被害を最小限に抑えている。メカニックマンが感心していたよ、実戦ならば簡単に修理できるって」
連邦司令官「最初は軟弱者とーーあ・・失礼、この結果ならば引き続きテストをやってもらいたい」
ラッセル「引き続き・・・?」
ロバート「実はこのランドオックスは量産型だけではなく、リーダー機も作っていて、ラッセル少尉にはそっちのテストもやってもらいたいんだ」
ラッセル「え?」
ロバート「どうだい『ガインオックス』の乗り心地は?
武装の方も載せ変えているからね、二連装高収束エネルギー砲『ギガテックキャノン』、大口径にした『リニアキャノン』、両腕部をグルンガストのに換え、フレキシブルに対応できる様にした『ガトリングアーム』に多弾頭化した『スプリットミサイルG』、装甲も新規のモノに変えているから問題ないよ」
ラッセル「装甲を新規にですか? 別にあの装甲でも問題はないと思いましたが」
ロバート「いや、少しね」
ラッセル(・・・なんだろう? コンソールも先のでは起動していなかったのが起動しているし、‥でも、両腕部が変わったのは正直嬉しいな、これなら手甲部分で防御形態を取れる)
ロバート「今回は武器のテストも兼ねているから、火気管制は実戦と同様だから、でも、現場の護衛任務中の機体には当てないでくれよ・・・」
突如爆発が上がった。それが護衛についていた量産型ヒュッケバインmkUからだという事に気付くのに、そう時間はかからなかった。
ラッセル「じ・・自分、まだ撃っていませんよ!」
連邦兵士「レーダーに反応、おそらく陸上戦艦です!」
連邦司令官「何だと!?」
連邦兵士「識別しました! 『ライノセラス』です!」
連邦司令官「何ぃ!? DC・ノイエは壊滅した筈だぞ! ノイエDCの残党か?」
連邦兵士「イスルギ重工から通電、テロリストからの襲撃により、ライノセラス1艦とリオンとバレリオンらを奪われたとの事です。
なお、破壊された当通信施設の復旧により、連絡が遅れてしまった模様です」
連邦司令官「通信施設に頼らずとも、伝達は出来るだろうてッ!」
連邦兵士「イスルギ重工からこちらへの救援を、今大至急に向かわせたとの事!」
連邦司令官「今からだと! 本当に大至急と言い張るならば、今! ここに現れろと伝えておけぃ!!」
連邦兵士「レーダーに多数の反応! 識別からしてリオン・バレリオンの部隊です!」
連邦兵士「テロリストリーダーと思われる者からの声明文届きました。『今だこの地球圏の害虫と成り果てている連邦軍をいつの日か駆逐する灯火となる為、連邦にへつらうマオ・インダストリー社に天誅を下す』・・・」
連邦司令官「なんと自己満足な・・・! イカン! 護衛部隊の戦力は・・・!」
連邦兵士「こちらの護衛部隊、・・・全滅です」
連邦司令官「こちらの危険認知が低かったという事か・・・」
ロバート『聞いての通り、現時点の戦力はそのガインオックスだけで、救援の方は・・・当分見込みは無い様だ。
この施設を破棄して、一時防衛線を下げる案もあるけど、その場合マオ社近くで戦う事になる。そうなると住居施設にまず被害が向いてしまう。すまないけど・・・』
ラッセル「はい、分かっています。時間を稼ぎつつ、ここを防衛してみます。しかし、月面でライノセラスなんて、ムーンクレイドル襲撃事件を思い出しますけど・・」
ロバート「ご名答、その時に破壊したのを、イスルギ重工が引き取ってね。研究用に修復したのを奪われたって話さ」
ジョディ『大変です! ヒューバットがランドオックスで無断出撃しました!』
ロバート『なんだって! あれは実弾の装填の後、2次防衛ラインに下がる命令が出ていたはずだろ!?』
マイケル「そんなモン知るかだろッ! しかも弾丸の切り替えもせずにメガキャノンだけで立ち向かうつもりだ、あのクレイジーは!」
ラッセル「ガインオックス、出撃します!」
ヒューバット「見せてやるんだ・・俺にPTの適正があるって事を、戦車乗りで終わる気はないんだよ!」
ゴロウ『撤収を! ケリー兵長!』
ヒューバット「当たらなければいいんだよ!」
ジョディ『リオン2機が接近! ヒューバット、射程範囲内に入ってしまうわ!』
ヒューバット「そこからのバルカンなら後退で避けられる・・! バックの奴がミサイル? ちぃロックされちまったか。
こいつの足回りなら、回避運動で避けられる・・」
ラッセル「向きを変えちゃあいけないッ!」
ラッセル(前には出られない、なら・・押さえる!)
ヒューバット「なっ? 自分の機体で尻を押さえやがった!?
バカ野郎! ミ・・ミサイルが当たるぅ・・・・・・!!
・・・・、・・・・・・・・な・・・なんとも無い・・のか?」
ラッセル「リオンのミサイル程度で、その装甲は砕けません。
けど側面や背面だと話は変わります。銃火器や足回りに当たる可能・・」
ヒューバット「だから前面装甲で受ける。そんなモン、戦車乗りにとっちゃあ初歩の・・・・・・しょ・ほ・・・・・だよな」
ラッセル「はい、特機の装甲を信頼して下さい。貴方達はまだ特機乗りとして日が浅いんです。日を経て、経験を得て戦線に臨んで下さい。
だから、今は2次防衛ラインに後退をお願いします。次はあるんです絶対に!」
ヒューバット「少尉、お願いがあります! 俺をここに置いてください。単機防衛なんて無理です!」
ラッセル「大丈夫です。自分に考えがあります。
でも、貴方達の事まで考え切れませんので、ヒューバット兵長、最初に伝えた通り、後退をお願いします」
ヒューバット「少尉・・・分かりました。2次防衛ラインに後退します。
・・・あと、捨て台詞になりますが、階級を気にするなと言っていましたが、当人が階級で呼んでいたのでは、意味が無いのですが」
ラッセル「どうも自分は上にいるというのには慣れていないので、こういう感じになってしまうんですよ」
ヒューバット「了解、では少尉、ご武運を!」
ラッセル「・・・考えはあるものの、その『考え』が来るまで何とか持ちこたえる!」
敵兵士「バカな、レールガンの弾が弾かれる?」
敵兵士「前面では装甲で上手く弾かれる。頭上を取って、狙い撃ちにしてやる!」
ラッセル「通常の戦車なら頭上はありですが、ガインオックスは対空射撃だって、ガトリングアームで撃ち合う!」
敵兵士「何ぃ! リオンが戦車に打ち負けただと?」
ラッセル「もう一機が足を鈍めた! リニアカノン、いっけぇっ!」
敵兵士「リオン二機があっさりと? だが足は押さえてくれた。
バレリオンのビッグヘッドレールガンを直撃させれば!」
ラッセル「グゥッ! ・・・直撃は避けられた! 入射角から当砲射角を算出、バレリオンに撃ち負けはしない! ギガテックキャノンなら落とせる!」
敵兵士「バレリオンの弾を装甲で受け流し・・・どぅはッ!?」
敵兵士「リオン三機1チームで地表を滑空しながら攻撃、集まるな・・・散開を忘れるなよ」
敵兵士「いくら装甲の化け物のコイツでも、この多方向からの攻撃を喰らい続ければ」
ロバート『ラッセル少尉! ガインオックスはガストランダーのシステムもある!』
ラッセル「分かりました! ・・エネルギーフィールドを前方に形成!」
敵兵士「バリアを張った!? 化け物め、防御に専念した様だが、数で一気に押せばいいだけだ。奴は攻撃が出来ない。
各機、接戦でいくぞ!」
ラッセル「フィールド回転開始、エネルギードリル形成! ブースト全開! 突撃ドリル・ダッシャァァーー!!」
敵兵士「エ・・エネルギーのドリルだとぉぉぉぉ!?」
ラッセル「砲撃用地確保! 再度対応射撃に専念!」
敵艦長「たった一機にここまでの被害だと・・」
敵副長「しかし、リオンで足を止めています。バレリオン・ライノセラスの砲撃を続ければ、あの堅牢な化け物でも」
敵艦長「足は止められてはいない。前後移動を繰り返し、一所に留まらないまま、距離を保っている。
恐らく時間稼ぎだ。我々の方が足を止められている・・」
敵副長「では・・」
敵艦長「バレリオン部隊はライノセラスと共に前進、すまんがライノセラスの盾となってくれ。
砲撃距離をBに縮めた後、火力を一点に集中! あの化け物をしとめろッ!」
敵兵士「前進の後に集中砲火、了解、被弾は覚悟の上です!」
連邦兵士「敵戦線が接近、恐らくは集中攻撃です!」
ロバート「それは・・さすがにやばいぞ・・・」
連邦司令官「味方からの援軍はまだこないのか・・」
連邦兵「レーダーに反応はありません・・・・・え?」
敵艦長「どうした? レーダーに敵影が映ったか」
敵兵士「一瞬だけ、何か反応がありましたが、以後の反応はありません」
敵副長「レーダーの誤認でしょうか?」
敵艦長「・・・・ならいいのだが、・・まあいい。
今は化け物戦車を片付けろ!」
敵兵士「リオン6番14番が撃墜!」
敵副官「ある程度の被害は考慮の内です。マオ社に一矢報いられればいいのです。破滅への綻びという一矢を・・・・・」
敵兵士「リオン8番が頭部に被弾! これは・・・違います! 戦車からの射撃ではありません! 戦車後方からの狙撃です!」
敵艦長「何ぃ!? レーダー手! 何をやっている!」
敵兵士「いえ、依然レーダーに反応ありません!」
敵艦長「まさか・・ジャマーが張られていたのか・・」
ロバート「あれはアルブレード! って事は・・・・カチーナ中尉!」
カチーナ『わりぃわりぃ、ハイパージャマー起動させていたから通信は出来なくてな、まっその分敵さんに気付かれずにココにカッ飛ばせたけどな』
ラッセル『中尉・・助かりましたー』
カチーナ『ラッセル! てめぇ、何を助かった様な顔をしてやがる! まだ戦闘は終わっちゃいないぞ!』
ラッセル『はっはい!』
マイケル「・・・今確か・・・・」
ゴロウ「はい、カチーナ中尉と・・・」
ヒューバット「あれが噂の・・・・・」
ジョディ「・・自分の機体を敵味方の血で赤く染め上げたっていうあの『血塗れの悪魔』ッ!?」
マイケル「ああ、間違いない・・・肩についているパーソナルマークが『たこ』だぁぁぁぁジィィーザァァス!!」
ゴロウ「問答無用に目につく者を壊していく破壊の権化・・・・・・・・『破壊女帝』とも言われています・・・」
カチーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ラッセル「・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・」
カチーナ「ラッセルてめぇ・・・なぁに吹き込んでいやがる・・・」
ラッセル「い! いえ自分でありません! 自分も初耳です!」
カチーナ「だったら、あのクソッタレな風評は消しとくのが部下の仕事だろぉがぁぁーーー!!!」
ラッセル「初耳なんですから、無理難題ですよ中尉!」
カチーナ「ほぉ・・まぁいい、その口答えの分含めて・・・・・・・・・・・・・後で仕置きだー・・」
ラッセル「・・・え? ええぇぇ!」
カチーナ「じゃあ、まず先に」
アルブレードのハイパージャマーが再度起動する。
敵兵士「戦闘中に何処を見てい・・・・なんだ画面がブレッ・・何? ターゲットをロック出来ない!? センサーが敵機を認識してないだと!」
カチーナ「ここにいる奴ら全員をコテンパンに死なせてからだ!」
長銃のG・レールガンから短銃のG・リボルヴァーに変え乱射、敵リオンは数度に渡り鉄の弾丸に殴られ、力なくしたかの様に滑空している所を、更にリボルヴァーの銃底で殴られ、地表に叩きつけられる。
カチーナ「もはや問答無用って奴だ! 逃げたい奴は逃げろ! 逃げるんだったら後ろから撃つ! 逃げないんだったら前から斬り刻んでやるッ!!」
ラッセル(・・・・・悪魔というか、破壊の権化というか、野獣というか・・)
カチーナ「今のも仕置きに追加な」
ラッセル「ええ!? なんで分かるんですか!」
カチーナ「女のカンって奴だろうが!」
ラッセル(いや・・野じゅー・・・・・ぅ思うな自分!)
アルブレードは跳び、リオンの密集地のど真ん中に入ると、ブレードトンファーの刃を輝かせる。
カチーナ「面白い芸を見せてやる! のた打ち回りなッ!!」
ブレードトンファーの刃がきらめくと、敵のレールガンごと右腕を斬り、棍の部分で別のリオンのレールガンを叩く。その時発射された弾丸は流れ、味方のリオンに当たる。
崩れ落ちるリオンをブレードトンファーで貫くと、自分の元に引いて、背後にいるリオンに投げつける。体勢をモロに崩した瞬間、アルブレードの両の刃が走り、胴を左右から貫かれた。
抜いたトンファーをその勢いのまま、両側にいたリオン二機の頭部のカメラを叩き壊す。
さすがに有無を言わさず暴れまくる女帝から、距離を取ろうとするリオン軍団、だが、ブレードトンファーが回転し始めると、自らの機体を1回転させた。
刃の光の線がその場に残ると、光の線に合わせて、アルブレード近くのリオン全機の首から上がひずむ。
リオン一機が爆発すると、その爆発が起爆になり、次々に誘爆が生じて、爆発の熱が場を赤く染め上げる。
不意に一発の弾丸がアルブレードの近くをかすめる。
見れば、バレリオンらが進軍しており、巨大な銃口が標準を定めていた。
ラッセル「中尉! 自分が支援砲撃でバレリオンをかく乱・・」
カチーナ「ちゃんと押さえとけよ!」
リニアカノンの弾丸がバレリオンらの足場を叩き、粉塵を舞わせ、敵兵の視界を限定させる。
一方、バレリオンの砲撃がかすりもしない中を突撃するアルブレードの手の中には先程とは違う実剣が握られていた。
敵兵士「バレリオンの装甲をなめる・・ナァァァーー!?」
バレリオンの名を表す巨大な砲台、強力な砲撃に耐え切る様に頑強な作りとなっている砲台が、砲口から割られた竹の様に二つにずれていく。
敵兵士「友よ! 俺が守る・・・ゥウッ!?」
自慢の砲台を割られた友の機体を守るかの様にバレリオン一機が間に割り込んできた。
二回ほど光が轟いた。割って入ったバレリオンの両の腕部と脚部が地面に落ちる。そして支える物が無くなった本体もまた地面に落ちた。
実剣をいや、刀を豪胆に掲げ、今まさに振り下ろそうとして瞬間、その機体が口を開けて嘲け笑っているかの様に見えた。
二撃目を考慮して振るなどと考えずに、カタナ『シシオウブレード』は空を走り凪ぎ、刃先が地面に刺さった。
カチーナ「・・・・・・やっぱ合わないな。なんつーか手答えを感じにくい」
アルブレードが背を返した後、そこにあったモノは、一刀の元に『開き』にされたバレリオン二機だった。
敵兵士「この化け物が! 化け物がぁ!! こぉぉのっ・・・化ぁぁけ物がぁぁぁ!!」
リオン数機が編隊を組みながら、距離をとっての射撃を、アルブレードの一点に集中させていた。
カチーナ「化け物化け物とうるせぇんだよ! 雑魚リオンがぁぁぁ!」
敵兵士「ジャマーだろうが、距離を保って撃ち続ければそのうち当たる! ふふっ・・その手持ちの武器を投げてくれるのかな?」
カチーナ「・・・・・・あぁ、投げつけてやるぜコイツをなッ!」
敵兵士「はぁ? 本当に投げやが・・ガハァァ!?」
投てきされた鉄塊がリオンをぶん殴った。
敵兵士「ちょっと待てぇぇぇぇぇ! なんだその武器は!?」
アルブレードが手を引くと、凶悪な鉄塊が鎖を伝って手元に戻った。
カチーナ「ブーストハンマー、・・・あたしの一番の気に入りなんだよ」
敵兵士「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・デタラメだ」
カチーナ「じゃあな! 暴れずに食らってくたばれぇぇぇ!!」
敵兵士「そう易々とあたるか!」
カチーナ「甘ぇ!」
伸びきった鎖がピンと線を張ると、持っていたシシオウブレードのみねで鎖を押しきった。
押す事により、そこが軸となり、鉄塊に回転運動が加わった。
敵兵士「なにぃ!?」
軌道の変わった鎖にリオンは巻きつかれ、その身をがんじがらめにされる。
カチーナ「ぶん回してやるぜッ!」
まるで子供に捕まって、紐でくくられたあげくに振り回されまくる昆虫がごとくに気味良く回される。
カチーナ「それじゃあ仲良く! 仲間もろごと二目と見られない様に砕いてやるぜッ!!」
敵兵士「え?」
敵兵士「嘘」
敵兵士「来る?」
敵兵士「来るな!」
カチーナ「大! 撲! 殺ッ!!」
きれいに編隊を組んでいたリオンらは、きれいに巻き込まれていき、きれいな爆発を起こして散った。
カチーナ『いや〜すっきりするぜ。さぁ次はどれだ!』
連邦司令官「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ロバート「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
連邦司令官「これ、敵兵士という事で攻撃したら・・」
ロバート「多分、ここを落としますのでやめましょう」
敵艦長「・・・・・・・・・・・・・ええい! これ以上連邦を調子づかせるな!」
敵副長「あの遊撃機のPTを止めるのは中々と・・・・、あの砲撃機の支援射撃がかなり精度を・・・」
敵艦長「ならば、ライノセラスの火力をあのデタラメPTに集中! 当たらずともいい、とにかく打て」
カチーナ「そんなヘナチョコ弾に当たるか!」
敵艦長「よし、回避して離れたな。機関砲で弾幕を張れ! あの二機を両断したままを保持、生きているリオンとバレリオンはあの化け物戦車を狙え! こちらの火力は引き続きデタラメPTに固定、今は二機の両断だ!」
ラッセル「これは・・・やっやばい」
カチーナ「ちぃ! 面倒くせぇ事をしやがって! 骨を折り数えてやる・・・・」
ラッセル「・・・本当にやばい」
敵艦長「張り付かれた戦車ほど哀れなモノはない。そのまま廃れるがいい!」
ロバート「だぁぁぁぁぁぁぁぁ、このプログラムはぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
連邦司令官「いかん、いかんぞ! ロバート博士・・・何をやっているのかね?」
ロバート「いや、我ながら、複雑というか、ただただむかつくというか、プロテクト解除が出来なくてぇぇぇぇぇぇぇエエイッ!!
子が親に逆らうなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
隠し持っていたモノを取り出したロバートは、ソレをコンピュータに差し込んだ。
ロバート「クラァァァァァァッシュゥゥゥゥッ!!!」
敵艦長「よし、リオンはとどめを打ち込め! バレリオンは対象を施設に変更だ」
ガインオックスを中心に射撃が続いた為、場一帯に粉塵が舞っており、その噴煙の中、何かが輝いた。
敵兵士「カメラの反射光か? ・・・・ひとつ・・・・いや二つ?」
二つの輝き、それはまるで人の目の様だと思った瞬間、兵士はソレに気付いた。
敵兵士「こいつ! まさかグルン・・ガスゥゥゥッ!!?」
突如、噴煙の中から何かが飛び出し、近づいていたリオンに激突、リオンはパーツを撒き散らしながら空を飛んだ。
そして、飛び出たソレに巻き込まれて噴煙が流れていき、場が晴れていく。
カチーナ「あれは・・・まさか・・・・・・グルンガスト!?・・・・ラッセル! そいつは変形できたのか!?」
ラッセル「いや・・・・・自分も何がなにやら、気が付いたら超闘士モードに変形していて、本当に何も聞いていないんですよ」
カチーナ「・・・って事は、ロブッ!」
ロバート『そう! その通り! ガインオックスは量産型とは違い、変形機構を有しているのですよ。
そう、超闘士・・・凱式グルンガストに・・・・だが!あえて名乗るならば! 『ガインガスト』とぉぉ!!』
ラッセル「それゼンガー少佐の・・・結構気に入っていたんですか」
カチーナ「と、いうかよ。なんで最初から変形させてくれなかったんだよ?」
ロバート『いや〜〜実はまだ試作段階なモノで、事故などで変形させない様にプロテクトをかけていたのでして・・・』
ラッセル「それを今解除してくれたんですね」
ロバート『いえ! 私以外には解除できない様、超複雑にしたら、私でも無理でして・・・さすがは私ですよ』
カチーナ「はぁ? じゃあどうやって?」
ロバート『良くぞ聞いてくれました! 私お手製のウィルス・ソフトでシステムをクラッシュさせました! さすがは私ならば、こちらも私ですよ!』
カチーナ「・・・バカと天才は・・限りなく同じだな・・・」
ロバート『まぁ、上手くいった事ですし・・・えーとー・・いけ! ガインガスト!!』
ラッセル「は、はい! 頑張ります!」
カチーナ「・・・・・・・ま、いっか。いつもの事と思えば、
取りあえず、あの戦艦があたしに用があるってなら、付き合ってやるぜ! ラッセル! そっちに集まったリオンシリーズ全部! 叩きのめして来い!」
ラッセル「任せてください中尉!」
敵兵士「連邦の特機だったのかコイツ!? しかもSRGシリーズだって・・・!」
敵兵士「怖気づくな! いくら特機といえど、この数の差ならば問題はない! 数で一気に押し切るぞ!」
ラッセル「接戦している今に畳み掛けてみせる!」
怒涛に弾丸の嵐に晒されるガインガスト! しかし、構わず前に進む。
弾丸の全てを装甲で弾き、近づかれていく様は、対峙する者にとっては恐怖であろう。
その堅牢を見せ付ける次に、その剛腕を振るった。
次々に空に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられ、リオンの数は無力化されている方が増えていく。
ロバート『ガインガストにはブーストナックルは装備されていないが、その代わり・・・』
ラッセル「ええ、分かっています! 腕部をガトリングアームに移行、いけ!」
両腕の拳が変形、指が輪状に展開、機関砲にその姿を変え、弾丸を吐きながら両腕が弧を描いて振るう。吐かれた弾丸は、弧のままに地面を穿つ。
敵兵士「く・・、このままではやばい、慣れた距離に離れる。一時地表から後退だ」
ラッセル「離れる! ・・・それが狙いだぁ! このガインガストは砲撃用準特機。しかも人型の方が対空射撃をやりやすいんだ!!」
ガインガストに搭載されている銃砲の全てを対空射角に傾け、空にいるリオンらの移動にあわせて機体を動かす。
ラッセル「ギガテックキャノンエネルギー充填開始! リニアカノン電磁誘導レール起動! ガトリングアーム回転! 全砲門準備完了! 全力射撃スタートッ!!」
リオンらは編隊を組んで上昇していた。おそらくは安全圏に入ったら拡散する予定だったのだろう。だが、突如として進行方向を大河が道を阻んだ。
光り輝く大河、それは幾重に放たれた高エネルギー粒子と無数に飛び交う鉄の弾丸で出来ていた。
全てのリオンらは止められずに大河に飛び込んでいき、そして全てが弾かれ、無残に爆散していく。
ラッセル「リオンは落とした・・・次は!」
両腕を頭部前面で交差させ、防御体勢をとって、飛んできたレールガンの大型の弾丸を手甲で弾くが、装甲が少し欠ける。
敵兵士「見ろ! バレリオンのビッグヘッドレールガンなら効果はある。全機射撃用意!」
ラッセル「こっちだって、エネルギーフィールドを前方に形成」
敵兵士「さきのバリア・ドリルか・・・だが、戦車ほどの突撃力が無い今では、ただの貧弱なバリアだ」
ラッセル「フィールド回転開始! 前方にドリル力場! ギガテックキャノンを前方砲撃! 凱式最大攻撃! ドリル・ブラスタァァァァァー!!」
敵兵士「ド・・ドリルが飛んでくる!」
ギガテックキャノンのエネルギー射撃を運動エネルギーにドリルは突き進む。回転収束していくフィールドに巻きこまれ、収束した先端が全てを穿ち破壊していった。
敵兵士「・・・・艦長、我が部隊は当戦艦を残して全滅です」
敵艦長「・・そうか・・・・」
敵兵士「か・・艦長、副長の姿は見えませんが?」
敵艦長「! ・・・・何も言わずにこの艦橋から居なくなる訳が・・・まさか、いや、この作戦は元はといえば・・・・・・・ふっふっふっふっはっははははぁぁ!」
敵兵士「艦長・・・・・・・どうしましょうか・・・、もう我々には・・」
敵艦長「こうなれば、敵のあの二機が見事だったといえよう。連邦軍属といえな、さぞかし名のあるパイロットであろう」
敵兵士「しかし艦長!」
敵艦長「だが! 所詮は連邦! 男子の誉れという奴を教えてやる!
さあ諸君・・・死地に向かうぞ・・」
敵兵士「了解・・・・ライノセラス、艦首衝角を突撃角度に、進路方向を前方に限定完了・・・もう真っ直ぐにしか進みません」
敵艦長「・・真っ直ぐか・・・・そう・・それでいい」
カチーナ「コイツ! 施設へ向けて特攻しようとしてやがる!」
ラッセル「ライノセラスの特攻を止めるなんて・・・ドリル・ブラスターだって無理だ・・・」
連邦司令官『この施設を放棄する! この施設ならライノセラスも止まるだろう。君達もここから撤退するのだ!』
カチーナ「あの速度じゃあ、完全撤収は難しいな」
ラッセル「ゼンガー少佐なら一刀両断してくれるんでしょうね」
カチーナ「そりゃあ『斬艦刀』だからな・・・・そいつでもいけるか?」
ラッセル「やってみます・・・!」
カチーナ「強気だな」
ラッセル「強気が40、弱気が60で行ってきます」
カチーナ「まぁ強気だな・・・・しくるなよ」
ラッセル「はい」
敵兵士「先程の特機がこちらに向かってきます」
敵艦長「ほう・・・覚悟の上か連邦兵・・・・・うん?」
ラッセル「タンクモードに移行、 ガインオックス突撃!」
敵艦長「戦車で突ッ込んでくるだと! そんなモノで止められるものか!」
敵兵士「もうすぐ激突します」
敵艦長「弾かれるだけがオチだぞ連邦兵!」
ラッセル「目標を確認! ガインガストのパワーを見せてやる!」
敵兵士「いえ! 敵特機、進路を若干変えました。ただすれ違うだけです!」
ラッセル「腕部のみを限定変形! ・・いってみせるッ!」
敵艦長「さすがに臆したか・・それでいいいいぃぃぃッ!?」
敵兵士「て、敵特機! 左腕で当艦の左舷を掴んだ模様!」
速度をもってすれ違う同士だった為、掴まれた部分が支点となり二つが一つになって回り始める。
ラッセル『対ショック姿勢をお願いしますッ!』
無理矢理に敵艦の通信に割り込むラッセル。
そして、回転の中、戦車形態から少しずつパーツを動かして人型に変形させていき、足を出して立ち上がる。
その瞬間、回転軸を自らへと変化させ、回転のままに左腕を引き、身体を返して右腕で艦底をカチ上げて、さらに腰を上げ戦艦をも持ち上げ・・・・。
ラッセル「大回転! 背負い投げぇぇぇぇぇぇッ!!!」
柔道の技で空に投げた。
ラッセル「このまま遠く離れてしまえぇぇぇ!」
投げられた戦艦は空高く飛び、ラッセルの言葉通りに弧を描きながら施設から離れて行き、月のわずかな重力に引かれて地表に落下する。
衝撃が月の地表に伝わる。それがこの騒動最後の騒音となった。
後日―マオ・インダストリー社内執務室―
ミツコ「今回は申し訳がございませんわ。テロリストの襲撃にあったとはいえ、彼らに武器を与える様な結果になってしまいまして、我がイスルギ重工は今回の事件の損害を全面補償いたしますので・・」
リン「いや、当社への補償は無しで構わない。今回の事件の被害は連邦所属の量産機だけだからな、連邦だけを損害補償してくれ。
こっちの損害は微少だからな、むしろ良い『防災訓練』になったと感謝している」
ミツコ「あらあら、それは懐が深い事ですわね」
リン「しかし・・・・儲け損なったな」
ミツコ「ええ、再利用の実験用の機体は強奪され、襲撃の際の破損損害を含めれば、かなりの損益となりますわ」
リン「そういう話には見えるな」
ミツコ「けれども、敵が多いというのも大変でございますわね」
リン「ああ、そちらも敵がいるというのも大変なみたいだな。色々とやらなければいけない様だ」
ミツコ「私もトップとして色々と利益を考えなければいけませんので、今回の無補償の話、喜んでお受けさせていただきますわ。
では、わたしはここで失礼しますわ」
リン「・・・・・・ふぅ・・」
イルム「本当にいいのか? 事件の追求をしなくて。
今回の事件、どー見てもアイツの仕業だろ?」
リン「救援に来たイスルギの機体は新型のバレリオンだった、おそらくはコチラの新型機が撃墜された後に現れ、イスルギの砲撃機の性能をお披露目して、そしてその後、侘びを含めて新型機をタダ同然に譲って、連邦との商売の糸口にしたかったのであろう」
イルム「逮捕されたテロ・リーダーの話によれば、今回の事件の立案者は副長で、最近入った新入り野郎で身元は不明って事だ。
イスルギ襲撃の時もソイツが手引きしたお陰で、損害自体は軽微だったそうだ。部外者にしてはずいぶんと手際のいい事だ」
リン「だが、撃退に成功したので、イスルギは一方的な被害者だ。あの手のタイプは、下手に申し立てすれば、どの様な手を使って話をこじらせるか分かったモノではないからな」
イルム「成功すれば連邦との商売、失敗してもコチラへの牽制になる・・か。
クソ、せめて副長さえ確保できれば!」
リン(アイツのあの余裕だ。おそらくはもう―)
―ブリーフィングルーム―
タスク「恥ずかしながらタスク・シングウジ少尉、退院して参りました!」
ラッセル「退院おめでとう」
タスク「どもーってラッセル少尉! どうしたんですかそのケガ!?」
レオナ「この前の事件で・・」
タスク「えぇ!? あの時は負傷者はいなかったって、まさかトンデモない大ボスが事件の後に出てきたのか?」
レオナ「貴方、分かっていて聞いているでしょう。『仕置き』のせいだって」
タスク「お陰で防衛できたってのに、容赦ないなーあの中尉は」
ラッセル「いや、あの時は色々とありましたしね」
タスク「入れ替わりに入院できそうな感じに負傷してますが・・」
レオナ「私達の部隊は頑丈な方が多いと、つくづく感服しますわ」
ロバート「みなさん、こんにちは」
カチーナ「・・オッス」
イルム「タスク、無事退院できたみたいだな。やっぱ彼女の手厚い看護ってのは治りが早いみたいだな」
タスク「そりゃあもう!」
レオナ「・・・妙な噂は自分の周りにしてくださいませんかイルム中尉」
イルム「これは手厳しいなタスク、お前も大変だろうな」
タスク「イルム中尉には負けますよ、俺は一本気ですから」
イルム「・・・お前、言ってくれるじゃないか・・・・じゃあお前さんには手ほどきをしてやるぜ。全ての女性は慈しむ存在ってのを」
レオナ「ふしだらな事を押し付ける真似はやめてください」
ラッセル(・・・・? 中尉が・・・不機嫌? この前の事はあの時の49撃で収まったから、なにかあったのかな?)
ロバート「相変わらず騒がしくていいね。・・でラッセル少尉、少し・・・いいかな」
ラッセル「・・・・・・・・えっと、何か?」
タスク「あれ? 格納庫の方に何か搬入されてる?」
レオナ「イルム中尉のガストランダー・・・いえ、似てますが・・」
ロバート「実はね、凱式グルンガスト・・ガインガストがこの部隊に配備される事が決定したんだよ!」
ラッセル「ええぇぇええッ!??」
タスク「凱式って、この前、ラッセル少尉が乗ってた機体ですよね。・・・・・・おめでとうございます少尉!!」
ラッセル「ど、どうしてですか? あの機体はまだ試作機で実戦投入は早いのでは?」
ロバート「いや〜知ってるだろう。この前の時に変形プロテクトをクラッシュさせたって、お陰でプロテクト・プログラムが完全にオシャカになってしまってね。
で、いっその事、信頼できて腕前のある部隊に配備させる事が本決定されて」
タスク「俺らの部隊に搬入されたって話ですか・・・」
カチーナ「・・・・・・」
イルム「・・まぁ話はそれだけじゃないんだがな。お前ら入って来い」
ゴロウ「失礼します」
ヒューバット「ラッセル少尉、お久しぶりです」
ジョディ「お初にお目にかかります」
マイケル「新しくムーンクレイドル防衛任務に任されました!」
ラッセル「え? えぇ? 君達は?」
イルム「まー・・そういう事だ。凱式がムーンクレイドルの防衛部隊に配備されるんで、量産型のランドオックスも防衛部隊に配備される事に決まってだな・・・あーー・・」
ジョディ「一時的ですが、我々4人はヒリュウ改の仮預かりとなりました」
ラッセル「えーーーっと、つまりそれって・・」
ゴロウ「少尉! ご教授! お願いします! どんなにつらくともついていきます!」
ヒューバット「次の時までアンタの所で腕を磨かせてもらうぜ」
マイケル「俺達はSPIRITに満ち溢れます! よろしくお願いします。ラッセル少尉・・いや、ラッセル隊長!」
イルム「という訳だ。凱式を任される事だし、こいつらで新たな小隊作って、お前に任せるぞ」
ラッセル「エッ・・ええぇぇぇ!? 隊長ってそんな!」
カチーナ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・オメデトウ」
ラッセル(これかーーーーーー!!)
タスク「凄いじゃないですか! これで戦車小隊として上手く効果を上げれば、中尉に上がれるかも!」
ラッセル「ちょ・・・ちょっと待ってください! 話が飛びすぎですよ! もう少し落ち着いて・・」
イルム(持ち上げて被害の一点集中、本当にやる様だなタスク!)
ラッセル「イルム中尉! ここは初めてガストランダーに乗った者として、彼らにご教授をお願いできませんか!?」
イルム「俺? 俺はマオ社での復興手伝いやってる身分だし、せっかくリンの所にいるんだからな、せっかくのラブラブを邪魔する気か?」
タスク「俺は射撃が苦手だから、それにガンドロっていう抜群の賭け先がついてるから」
レオナ「戦車は乗り慣れていません」
カチーナ「・・・・・・・・」
ラッセル「だったら中尉はどうですか? 良かったら赤く塗って」
カチーナ「あたしに戦車なんていう泥臭いモンに乗せる気かテメェ・・・」
ラッセル「え、いえ、えー・・と、その、あの、何も悪気はなく」
カチーナ「偉くなるなーーーお前ー、ついに一つの隊を任される様になるとはなー、元隊長として鼻が高いぜー・・お前は頭が高くなるみたい・・・ダガナッ!!」
ラッセル「が・・・えッ・・・ぉ・・・・」
マイケル(この圧迫・・こいつが・・・こいつがACEって奴か!)
ジョディ(マイケル、では殺人鬼は全員ACEという事ね)
ラッセル「中尉! 自分はいつまでも中尉の部下であります! どうぞ我々に特訓をお願いします!」
タスク「え?」
イルム(悪魔に魂を売ったかラッセルーーー!! 被害をあえて拡大して一点辺りの損害を小さくする・・・レオナがいない! ・・・じゃあ俺もだ)
カチーナ「・・・・・・・そうか・・・・・じゃあしょうがないな・・・・ロブ・・」
ロバート「はっはい! もー何でも任せてくださいぃ!!」
カチーナ「死へのエレベーターな訓練機を作れぇー!」
タスク「真っ向から絶望的なモノを作らせようとしていませんかー!」
ラッセル「・・・・・・・・・・自分、頑張ります!」
タスク「・・・あのーロバート博士、ものは相談ですが、あまりキツくない方向性で・・・」
ロバート「マリオン博士と連絡とれました!」
タスク「四方八方に逃げ場なしな方向だーーー!」
ロバート「前に適正訓練施設として設計されたのがあるそうです。
重力を急激に変化させた環境で訓練させるというので、理論上、並の人間なら体内の機能が狂って30分と持たない為、廃止されました、その名もバンアレ・・・・・」
カチーナ「それだァァァァァァァァァーーー!!!」
ラッセル「はい中尉! 死ぬ気で頑張りますッ!!」
タスク「・・・度胸一発でぶちかまして無念に散りそう・・・・」
ヒューバット「噂通り騒がしい部隊だな、冗談でこんなに盛り上がれるなんて」
ゴロウ「・・・多分、これは本気ですね」
ジョディ「マイケル」
マイケル「なんだい?」
ジョディ「転属願いは棄却されましたわ」
第一話〈完〉
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